大日本茶道学会

【講演報告】「明治維新と近代茶道の黎明」

平成30年7月28日(土)新宿柿伝にて、茶湯同好会主催の第48回茶道夏期大学において、「明治維新と近代茶道の黎明」と題して講演を行いました。

1)明治維新によって、茶道をとりまく環境はどのように変化したのか?

まず、明治維新によって、茶道をとりまく環境の変化がどのように変わったかについて、次の様に整理しました。

 

まず、尊王攘夷という社会の大きな枠組みの変化を、幕府と藩による近世数寄者雇用体制の崩壊と位置づけ、次に、明治維新が、茶道を「国家に益なき「遊芸」」の一つに位置づけたことに対して、茶道の価値を社会に認めされるための意義づけが、茶人の側から、「忠孝」、「道学」、「芸術」、「綜合芸術」という形で試みられていることが価値意識レベルでの変化です。

 

同時に大名道具レベルでの変化として、所有者が大名から近代数寄者に移行していることを益田鈍翁、高橋箒庵を例にとって、現在は、大名道具が美術館の所蔵品となって、美術を楽しむ関心のある人に楽しむ程度に応じて開かれたものになりました。

 

そして、茶人の大名家の奉公人から、お茶の先生としての位置づけの変化にも、近代茶道が、社会制度の影響を受けて変化したこと反映されており、それが、前近代に形成された伝統文化が「自己改革」を必要とした内実です。

2)近代茶道とは何をさすのか?

近代茶道とは、近代の社会制度の変化とそれに対する意識の変化に対応する動きであり、それは、茶人の側が何に対して対応すべきと考えたかによって変化していきます。

 

その中で、曽祖父田中仙樵の大日本茶道学会の創立は、新たに開かれた世界に向かって日本の文化として誇れるものが必要だという意識と学術を進歩させるには、成果を公表・共有する仕組みが必要だとの認識にもとづいており、大日本茶道学会の名称もそれに由来することを指摘しました。

 

また、創立と同時に『茶道講義』を刊行した動きは、「学校」では、知的な理解を先行させることが求められているという認識に基づくものであり、同じく明治31年に「講道館柔道講義」を始めた嘉納治五郎、「蕪村発句集講義」をはじめた正岡子規とも同じ認識にもとづいていることから、伝統を近代に定着される流れの一環として近代茶道がうまれたことを指摘しました。

3)「近代茶道」を現代にどのように生かすか?

最後に、「茶道」を「喫茶環境の中で喫茶行為を通して人間関係を深め、その結果を自身の人間形成にフィードバックする営為」と定義する試案を示しつつ、伝統を未来に定着させていくために、「近代茶道」は、変わりつづけていく必要がある、と結論しました。

私が、求められて近代の茶道の話をする時には、自身が関係する大日本茶道学会のことを省くというわけにはいきません。しかし、他流を学ばれている方が大半を占める会でしたので、大きな枠組みの中で、できるだけ客観的に位置づけて話してみようとするのは、よい勉強になりました。

 

終了後、「茶道をなぜ「さどう」でなく、「ちゃどう」を読んだのか」、「田中仙樵の家元制度に対する考えは」という率直な質問をいただけたのも、こちらの姿勢が伝わったからかな、と手ごたえを感じつつ、西進した台風の影響の豪雨の中帰途につきました。

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