大日本茶道学会 - 公益財団法人三徳庵

令和3年5月:触れる感覚

 未だ続く、新型コロナウィルスの流行は、世界にさまざまな変化をもたらしました。その一つに、人と人との接触への極度の恐れがあげられるかと思います。

 欧米では、握手の習慣の代わりに、肘と肘とをタッチさせる新しい挨拶が行われているのを、ニュースでご覧になった方も多いかと思います。握手の習慣が定着していないので、お辞儀で済ませればよいのに、と思った方も、私だけではないかと思います。

 しかし、人間の幸福感が、皮膚感覚から生み出されることを見逃していました。

 歓びを共有するのも、悲しみを慰めるのも、言葉だけではなく、人と人とが「触れ合う」ことによって、効果的に達成されることは、日本人とて、同じことです。

人間が幸福になるには、触れ合うことが不可欠です。

しかし、新型コロナウィルスの感染拡大は、エレベーターのボタンを押すのも忌避する気持ちを生み出したように、私たちから触れる機会を極端に無くそうとしています。

非接触技術の開発は、私たちの安心感を増すかもしれません。しかし、接触することが減るのは、私たちの幸福感を減らすの可能性がありそうです。かといって、現下の感染症対策を無視するわけにはまいりません。

私たち茶人には、茶人ならではの解決策があります。

茶碗を手で愛でてください。手で愛でるとは、茶碗の土や釉薬の硬さや滑らかさを、手触りから感じ取るように触れるということです。ご自分一人で、その茶碗の個性を確認するように、茶碗と触れ合ってみてください。

不足している接触感覚を補うことで、皆様の幸福感が増しますことを願っています。

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