大日本茶道学会 - 公益財団法人三徳庵

令和4年4月:ならし運転

化石燃料を地球環境問題の元凶ととらえる流れの中で、自動車の動力が、電気へと切り替わっていく動きが本格化してきています。ガソリンエンジンの自動車が、電気モーターの自動車に完全に入れ替わったら、新車納入後にやるべきこととされてきた「ならし運転」は、必要なくなるのでしょうか。

 ならし運転とは、一定の走行距離に達するまで、エンジンをあまり吹かさずに走るというものです。内部のシリンダーをはじめ、エンジンは金属同士が擦れ合って動いているものなので、慣らし運転をせずに急激に擦れ合わせてしまうと、金属同士の摩耗が激しく、不調や故障の原因になるといわれます。

 学生時代、車好きの友人が、エンジンの性能をフルに引き出すために、ならし運転に神経質になっていたことを思い出します。散歩派の私としては、新しい靴を履いて、靴擦れができるということからしか、慣らし運転の必要性を推測できませんでした。

 一昨年、散歩用に新たなウオーキングシューズを買ったときに、「この靴は今までとは、違った足の筋肉の使い方をさせますので、最初から、長時間は歩かないでください」と店の人に注意されました。靴の「ならし運転」の勧めでした。

 ガソリンエンジンが極めて多数の部品から構成されているのに対して、電気モーターの構造が単純であるために、電気モーターの自動車に入れ替わることで、日本の技術的な優位の低下が懸念されています。 人間の体も、単純そうにみえても複雑さは、モーターよりも、内燃エンジンにたとえたほうが良さそうです。

 いろいろなことが再び始められるようになってきた今日、すぐにエンジン全開とはいかなかったときに、「慣らし運転」という言葉を思い出してみてはいかがでしょうか。

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