大日本茶道学会

【茶道コラム】第34回「招くことの楽しみ」を追加しました

外出自粛という、普段とは違った日常を過ごすことを余儀なくされました。 
伺ってみると、「もともと家が好きなので苦になりませんでした。」という方や、「家にいて
日々発見でした」と仰る方といろいろですね。

制限が解除され、いざ外出となると、支度や交通機関を利用する覚悟に手間を取る
自分と向き合うことになりました。これまでは、何気なく外出していたのに、出かけるという
ことの大変さに気づきます。また、人と会い話すなどなんとも思わなかったことに対して、
嬉しいと日ごろの何倍も感じ、当たり前の生活が、有難い生活へと様変わりしたようです。
 そうしてみると、人を招いたとき、その誘いを受けてわざわざいらしてくださる方にも感
謝の気持ちがわいてきます。その方と少しでも良い時間を持ちたい、というのが、本来の
もてなしの姿なのかと、そのもてなしの主眼を一服の抹茶にしようというのが私たちの目標
なのでしょう。

茶歴の長い方の点前を拝見していると、稽古ですが、そこに客をもてなす気持ちが
整っています。「おしまいください」の客の言葉に、「もう一服いかがですか」と声をかける
姿を見て、相手を慮る気持ちを育てていくのが点前を習うということなのかと、実感した
日々です。風炉が据えてあるところに、水指をまず持ち出す。身体と一体になって運び
出してきた水指が今度は、風炉と調和する。つぎはどのようにどんな道具を持ち出して
くれるのかしら、と楽しみが膨らみます。
 茶筅を振る音ももてなしです。始め静かに、そして少し早く強く、そして収めるように
静かに茶と馴染む茶筅の動きに、一服いただけるという喜びがあるのだと実感します。
 招くこと、目の前で点てた茶をいただけることの喜びをもう一度確認して、そしてそれを
伝えていきませんか。本来の茶道の楽しみが見えてくるはずです。

            教場長 田中 仙融 (令和2年8月発行 会報「えんじゅ104号」掲載)

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