大日本茶道学会

【茶道コラム】第30回「伝える気持ち」を追加しました

四月から五月にかけての十連休は、平成から令和の御代へと代わることをかみしめた、
本当に貴重な長い休みだったように思い返しています。
 平成の御世が終わるということで、いろいろな映像や、記事が紹介され、改めて自らが
歩んできた道をふり返りました。そこには多くの変化があり、便利になったことや、その
ために失われたことを改めて知る機会でした。
 そんな中、退位礼正殿の儀に際しての陛下からのお言葉は、内容はもちろん、国民に
語り掛けられる姿に改めて教えていただくことがたくさんあったと思います。

茶道を伝えるということは、技術や形を指導するというよりも、それを守ってきた人たち
の知恵と思いとその心を次の世代につなげていくことだと思います。
 そのため、ただ単に、自分が教わったと同じ言葉で伝えても、相手が理解できるかわかり
ません。その時に応じて、ゆっくりと、抑揚を考え丁寧に、相手が受け止めているかを感じ
ながら話す必要があるのでしょう。

陛下の国民一人一人に話しかけ、諭すように語られる間と速さ、それは、日本の国民の
手本となる姿だと実感しました。常に前に聞く人がいるように、その人の心に語り掛ける
ように話される穏やかさ。私たちとわかり合いたいと思ってくださっているその表れなの
ではないでしょうか。

三回忌の茶席に入れた花を見て「思いを託して花を入れるということはこういうことなの
ですね」と感想を述べてくださった方があります。心が伝わったという嬉しい感想でした。
茶を通して人に出合うとき、その相手は様々です。老若男女、いろいろな背景の方々です。
自分たち茶人の理解で言葉を選ぶのではなく、その方々一人一人に向き合うように、自分
が伝えたいという心をもって向き合うこと、それがまた、素敵な茶人の姿のように思います。

              教場長 田中 仙融 (令和元年8月発行 会報「えんじゅ100号」掲載)

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